障子の効果とスペースデザイン
障子は伝統的な日本の建具ですが、現代のライフスタイルにも馴染み、断熱・省エネ効果も期待できます。
この記事では、こうした障子によるスペースデザインについて実例を挙げながらご説明したいと思います。
伝統的な障子は、一般的に障子紙といわれている和紙が張られており、経年劣化や破損による定期的な張替えが必要でしたが、昨今ではプラスチックで補強された障子紙で張るケースが多く、多少モノが当たっても破れないようになっています。(ただし、お子様がまだ小さいご家庭では、配慮が必要になります。)
規格化された障子の既製品は比較的廉価で使いやすいのですが、プロジェクトによっては格子のパターンや寸法を含めてフルオーダーで製作することもあります。
障子を使用するメリットとしては下記のようなポイントがあります。
・行灯のように、自然光を拡散させて均等に明るい室内をつくることができる。
・和紙や木の持つ、柔らかな質感を得ることができる。
・ブラインドと同様に、室内のプライバシーを守る目隠し効果がある。
・補助的であるが、断熱効果が見込める。
障子のメリットについては多くの方が体験・実感していることと思います。
その中でも、行灯のように拡散された白く明るい自然光の効果というのは障子に固有のもので、室内の性格を大きく印象づけます。意匠的な面ではこの「行灯効果」が最もインパクトが大きいかと思います。また障子による格子のある白い面は、外部からのノイズを遮断し抽象的なイメージを高めるため、モダンなテイストの空間とも相性が良いといえます。
断熱効果については、省エネ計算の際に開口部の付属部材として断熱効果を加算することが出来ます。数値的に大きな断熱効果が見込める訳ではありませんが、カーテン等に較べると気密度が高くなるので、相対的により高い数値を設定できます。
ここからは、KHアーキテクツでの実例をご紹介します。
「代官山レジデンス」は、マンション住戸のリノベーションですが、リビングに大型の4枚引き障子を入れ、部屋全体の性格を特徴づけています。
リビングの障子の全景。
30ミリ角のスプルス材を組み合わせて大小の格子がリズミカルに並ぶようにしています。
リビングの障子を側面から見たところ。大型の掃出し窓なので、単調にならないよう大小の格子パターンを連続させてリズミカルに見えるようにしています。
リビング全体を見たところ。障子の光が室内全体をほのかに明るくしています。床にカーペットを使用していることもあり、全体的に柔らかな素材・雰囲気のインテリアとなっています。
「三鷹K邸」は、戸建て住宅のリノベーションです。
前面道路から主だった部屋の室内が丸見えになるような配置であったため、窓や扉に障子を用いてプライバシーを守りつつ、明るい自然光のある室内をつくっています。
リビングエリアを見たところ。各部の障子を通して室内に光が入ります。写真左側の背の高い障子は和紙を両面に張った「太鼓張り」の障子。
ダイニング、キッチンを見たところ。障子を通して柔らかな光が拡散します。
写真ではわかりにくいですが、壁、天井には和紙系クロスを使用しており、より柔らかな触感のある室内になっています。
2階のファミリー・ライブラリー。正面の障子の後ろは階段です。この部分の障子は、明り取りの機能以外に階段吹抜けからの熱損失を防ぐ機能も併せ持っています。
新築の木造住宅である、「みどりのK邸」でも部分的に障子を活用しています。
写真左の障子は玄関、右側の障子は和室にそれぞれつながっています。こちらの住宅では正方形に近いプロポーションでマス目の大きな障子にしています。こちらの住宅も「太鼓張り」の障子とし、あまり和風のテイストを強調しすぎないようにしています。
和室を2階から見下ろしたところ。ロフト部分の手摺には障子と同じ和紙を貼ったポリカーボネート板を入れており、障子と併せて行灯効果をつくることを意図しています。
「府中エコ・コートハウス」でも「みどりのK邸」の試みを継承し、障子とポリカーボネート板を組み合わせて行灯効果が出るようにしています。
2階リビングの様子。障子の奥は共有スペース、上部はロフトになっています。この住宅の場合、照明の明るさを抑え気味にしているため、行灯効果で明るさを補っているところがあります。
こちらは1階の和室。4.5畳ほどの小ぶりでシンプルかつスタンダードな和室です。意匠的に凝ったことはしていませんが、障子越しに柔らかな日差しのある、お昼寝をしたくなるような感じの部屋になりました。
以上、KHアーキテクツでの実例をご紹介しました。
いずれのプロジェクトでも、行灯効果がよくわかるものと思いますが、モダンなテイストのデザインにも違和感なく馴染むので、部分的な使用でも問題無いと思います。
色々とメリットのある障子ですが、新築、リノベーションを問わず空間に馴染ませることが出来るので、機会がありましたら採用をご検討ください。
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