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断熱性能グレードの比較


2022年現在、2025年度から省エネ基準適合義務化が小規模な住宅においても開始される予定となっています。


この記事では、省エネ義務化に合わせて改正された断熱等級と、主要な民間規格や性能について、概要を解説してみたいと思います。


断熱性能については、住宅品質確保促進法の住宅性能表示制度による「断熱等級」が、法令上で定義されている唯一の基準として2000年から運用されています。

しかし、現行の断熱等級には高断熱住宅に必要とされる断熱性能に対する等級ランクが無く、より高断熱であっても「断熱等級4」までしか格付け出来ませんでした。

そして、等級4よりも高い断熱性能の場合には、民間規格や個々の事業者で独自の呼称が提唱され、各々の判断で使用しているのが実情となっています。

今回の適合義務化にあたっては、こうした現状を踏まえ、より高次の断熱等級が追加されて上位の断熱仕様・規格との整合が図られています。


まず、今回の改正では、断熱等級に「等級5、6、7」が新設されました。

これまでは「等級2、3、4」の三段階でしたが、最上位の「等級4」の上に更に三段階の等級が設定されたことになります。

そして、省エネ義務化に伴って最低クリアすべき基準は、これまでで最上位の「等級4」になり、「等級2、3」レベルの住宅は実質的に新築不可となります。


また「等級4」は長期優良化住宅に必須の基準でしたが、改正により「等級5」が長期優良化住宅の必須基準になりました。「等級5」はZEHの住宅でクリアすべき数値に同等のものとして設定されています。

ちなみに、ZEHはZero Energy Houseの略ですが、創エネも加味してZero Energyとしているせいか、断熱性能としては決して高いとはいえない性能値になっています。



下位の等級が実質的に廃止されて、長期優良化住宅の基準も厳しくなるという流れからすると、大変厳しい改正となる印象を受けますが、逆にこれまでの断熱基準が緩すぎた、ともいえるようです。

実際のところ、最近の木造住宅で標準的に用いられる、高性能グラスウールとペアガラスのアルミサッシュを使用すれば「等級4」はクリア可能なので、変則的な設計・仕様としない限り、一般的な住宅でも省エネ義務の基準をクリア出来ると考えられます。


そして今回の改正では下表にあるように、「等級5」から更に「等級6、7」が設定されており、「等級6」は有識者団体の民間規格である「HEAT20G2」、「等級7」は「HEAT20G3」に相当するレベルとして設定されています。

これまで高気密高断熱住宅に適合した断熱等級が無かったのが今回の改正でようやく登場し、現行の高断熱仕様と断熱等級のグレードが整合しつつある、といえるかと思います。




上表のように品確法の断熱等級は、これまでの規格を一新して、高気密高断熱へとシフトしている方向性が明確になっていますが、省エネやエコロジー対応を考慮した時代の流れ、あるいは温暖化による気候変動を日々実感することの証左としての厳格化といえるかもしれません。

また上の表にはUA値の数値と共に、性能グレードをよりイメージしやすいような具体的な性能の程度を示していますので、併せてご参照ください。


ちなみに、断熱仕様の最上位グレードは「寒冷地での無暖房住宅」と考えられ、寒冷地でも暖房の必要が無い状態で快適に生活できるのが理想形と考えられます。


このレベルに対してはまだ断熱等級が設定されておらず、実際に事例も少ないのが実情ですが、断熱材の厚さが分厚くなる点やトリプルガラス以上の高性能ガラスが必要になる点、それらの仕様・設備のアップグレードによりイニシャル・コストが高くなる点等からも、まだまだ実現のハードルが高いといえます。



とはいえ、今後のテクノロジーの進化次第では、無暖房、無空調が標準になる時代が来るかもしれません。


これは、2、30年前に現在の高断熱基準がより一般的になることが全く想定できていなかったことと同じ話ですが、将来的な変化を見越しつつ、個々人の理想とする温熱環境の想定に対する技術やコストの実現可能性を考慮した上で、グレードを設定するのがベターな選択といえるかと思います。



KHアーキテクツでは温暖地域での住宅の場合、「HEAT20G2グレード」=「等級6」を推奨していますが、将来的には無暖房・無空調、ひいては電線等のインフラを引き込まない、「オフ・グリッド」の住宅が実現できればと考えています。





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