木架構あらわしの都市型住宅
木造の魅力のひとつは、古い和風建築に見られるような、あらわしになった柱梁の架構にあるといえます。
架構があらわしになっていると、木のぬくもりがありながら力強い、おおらかな空間を味わうことが出来ます。一方で、市街地においては防火・耐火上の制約で架構あらわしにすることが難しいケースが多くあります。
この記事では、主に都市型住宅において、木造架構を内部にあらわしにする場合のポイントをご紹介したいと思います。
・斜線制限を検討し、架構の形状を選択する
架構の組み方は様々な方法があり、選択肢は色々あります。
都市部の場合、道路斜線や北側斜線等の法規制から形状が決まるケースが多いのですが、断面的な形状、梁のピッチ、天窓や高窓の有無等を検討し、コストを含めて最適解と思われる案に絞ってゆきます。
・防火、耐火上への配慮
市街地では多くの場合、外壁面、屋根面に防火、耐火性能が求められます。
そのため、基本的に柱梁は耐火性能のある石膏ボード等で覆う必要がある場合がほとんどになります。
昨今の木造住宅で架構あらわしが少ないのは、こうした防火・耐火に対する措置が必要な点もひとつの要因といえます。
また3階建て住宅の場合、法規上「準耐火建築物」としての耐火性能が求められるため、架構あらわしにするのが難しくなりますが、外壁の耐火性能をあげることで架構あらわしにすることも出来ます。ただ、全体的なコストアップにつながるので実現性のハードルはやや高くなります。
・コスト面の配慮
あらわし仕上げにする場合は、「化粧材」という表面をキレイに加工した木材を使用する必要があります。(あえて化粧材を使用しないケースもあります。)そのため、コストがやや高くなる点に留意する必要があります。
昨今、あらわし仕上げがあまり見られないのは、こうしたコスト面の課題と、施工がやや複雑になる点があります。
おおよそ、上記のようなポイントが考えられますが、ここからはKHアーキテクツの実例について解説したいと思います。
「みどりのK邸」はつくば市の新興住宅地に建つ住宅です。
屋根の架構と壁面の一部で柱梁があらわしになるようにしています。
断面パース。外壁面は防火の必要性から石膏ボードで覆っています。屋根の架構もあらわしにしていますが、通常は梁の間に入れる断熱材を構造用合板の上に断熱材を敷く、といった工夫を施しています。
リビングをからダイニング側を見たところ。柱を壁から独立させて、架構をアクセント的に強調しています。
吹抜け部分からダイニングを見たところ。
2階床部分の梁と柱があらわしになっており、在来構法ならではの架構の見える空間をつくっています。
総じて、都市型住宅では防火や断熱の必要性から、架構を全て覆って見えないようにする「大壁」でつくられるケースが多いですが、部分的にでも架構あらわしにすると、木造本来のぬくもりと味わいのある空間が実現できます。
ちなみに、架構あらわしになった壁面のことを「真壁」といいますが、古い住宅ですと「真壁」でつくられていることが多く、少し懐かしい感じがします。
KHアーキテクツでは、架構あらわし=「真壁」構法も積極的に用いつつ、伝統的でありながらシンプルな空間性をつくるようにしています。
こうした空間づくりにご興味ありましたらぜひお問合せください。
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