コートハウス(中庭型住宅)のメリット
コートハウスとは、一般的に中庭型住宅のことを意味します。
都市部の住宅において、中庭のある住宅はスタンダードなタイプのひとつですが、ここではコートハウスのメリットや特徴についてご紹介したいと思います。
コートハウスは、日本でいえば坪庭のある京都の町家を思い浮かべると理解しやすいかと思います。町家に限らず、住宅に中庭のような外部空間を設ける方法は、洋の東西を問わず古来から用いられています。
中庭を設けることの主なメリットは下記のような点があります。
・プライバシーの守られた外部空間を創ることが出来る。
・中庭を通して家族のアクティビティ、気配を感じることが出来る。
・中庭を通して室内に緑を取り入れ、エコな住環境を創ることが出来る。
・敷地の奥側の部屋に光や風、緑を取り入れることが出来、法規制上必要な居室の採光量をクリア出来る。
おおよそ上記のメリットが考えられます。
日本の場合、都市部において昔の街区割りの名残や不動産販売の際の土地の分割により、間口が狭く奥行きの長い敷地が多く存在します。そうした奥行きの長い敷地に住宅を計画する場合、コートハウスとすることは有効な方法のひとつと言えます。
一方で、コートハウスのデメリットとしては下記があります。
・道路側に駐車場等のオープンスペースを確保するのが難しいケースがある。
・形状が複雑になるので、コストアップ要因になる。
・植栽等、定期的なメンテナンスが必要な部分が増える。
車の所有を想定される場合は、駐車スペースと中庭という2つの大きなオープンスペースを設ける必要があるので、スペースの割り振りや建物の形状・配置に注意が必要になります。コストやメンテナンスについては、過大な負担増にはならないものの、設計の際に配慮しながら進める必要があります。
ここからは、KHアーキテクツでの実例をご紹介します。
「阿佐ヶ谷ライト・エコハウス」は駅近の住宅街に立地しており、間口より奥行きが深い、都内で典型的な形状の敷地に建っています。
平面形状がコの字型になっており、約2.3mx2.6mの中庭があります。
この住宅は3階建ての木造住宅ですが、採光・通風に不利な1階奥側の部屋=主寝室にも採光・通風が得られています。
中庭の全景。ウッドデッキを敷いています。プランターには日陰に強いアオダモを植えています。写真の中で、1階の左側が主寝室、右側が浴室になります。浴室は中庭の景色が楽しめる、ビューバスになっています。木のルーバーは正面側から見ると透けていますが、両サイドの居室部分は、外部からのぞくことが出来ないようになっています。
建物ダイアグラム。道路側、隣地側の窓は小さめにする一方、中庭側は大きな窓として、プライバシーを守りつつ開放的な雰囲気をつくっています。中庭を中心として光や風が通るプランニングになっています。
中庭を見上げたところ。大きな窓から空や緑が室内に十分に取り込めるようにしています。
「奥沢エコ・コートハウス」は、二世帯住宅の中間部分に中庭を設けています。
中庭があることで親世帯エリアの採光・通風を確保すると同時に、子世帯との心理的な緩衝帯になっています。
平面図の左側のブルー部分が親世帯ゾーンで、右側のピンク部分が子世帯ゾーンになります。中庭はその中間にあり、緩衝帯として機能し、敷地奥側にある親世帯への採光
・通風が得られるようにプランニングされています。
西側から見た中庭。木製ルーバーでプライバシーが守られるようにしています。ルーバーは光や風を通すので、圧迫感が無く軽さのある印象を中庭につくります。
中庭を内側から見たところ。床はタイル仕上げとしていて、ドライな質感のスペースになっています。これは、BBQやお子様の遊び場としてのアウトドア利用を想定した為で、植栽を入れないフリーなオープンスペースになっています。
中庭を親世帯リビングから見たところ。掃出し窓に障子を入れているので、光を通しつつプライバシーが守られた空間になっています。
中庭側から室内を見たところ。2階は出窓としています。中庭に面したそれぞれの部屋の窓から、じんわりと家族の気配が感じられるようなつくり方になっています。
「府中エコ・コートハウス」では、1階に親世帯、2階に子世帯という重層長屋形式の二世帯住宅の中心部分に中庭を設けています。
鳥瞰CG。ヒの字型の平面形をしており、中央のベージュ色の部分が中庭になります。
西側から見たところ。中庭部分は仕上げに化粧杉板を張っています。1階部分で約4.4m x 3.8mの大きさがあり、戸建て住宅の中庭としては余裕のある大きさになっています。
2階から見た中庭。目隠しルーバーの影が中庭にリズミカルな表情をつくっています。中庭の外壁全体に杉板を張っているので、見た目に優しい印象の空間になっています。
1階のリビングを見たところ。中庭から光が入り明るい雰囲気をつくっています。
ちなみに、中庭はこの写真の撮影後に造園工事に入っており、ウッドデッキと植栽のある庭園が完成しています。
(記事執筆時点で写真撮影未了のため、撮影次第アップデートします。)
この住宅での中庭は、光や風、緑を十分に取り込むことが出来、家族間の気配を感じられるプライベートな外部空間、といった中庭の典型的なメリットを十分な余裕を持って実現しえた、理想的な実例のひとつといえるかと思います。
以上、コートハウスのメリットについて実例を用いて説明しました。
都市部では間口が狭く奥行きが長い敷地の比率が高いので、コートハウスはそうした敷地に対して非常に有効な平面タイプといえます。
KHアーキテクツではコートハウス形式の住宅を他にも多く手掛けています。住宅をご検討の際には、コートハウスについても是非ご検討ください。
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